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水平線。

  • Posted by: JUNICHI KATO
  • 2007年7月23日 15:13
  • 気付き

いつの間にか、ブームというより、すっかり日本に定着してしまった「北欧」という言葉。
特に建築・インテリアの世界では、あちらこちらで取り上げられています。

そういう私も、気候風土から生み出されるデザイン、簡単に言えば、控えめで内側に向かうデザインには、
いたく共感し、フィンランドの建築家アルバ・アアルトが一番の憧れだったりもします。

数年前、生誕100周年を向かえたデンマークの建築家アルネ・ヤコブセンの建築・インテリアデザインは、
あたかもそこにあったかのように「和」になじむ、デザインの持つキャパシティの深さには驚くばかりです。 

そういえば、昨日読んだ本に、こんなことが書いてありました。

デンマーク人作家、アクセル・サンデモーセが1933年に発表した小説の中に、ヤンテという町が登場します。
その小説は、デンマークをモデルにした架空の町が舞台で、ヤンテの住民には守るべき十戒がありました。
それは、ヤンテロー。またの名をヤンテの掟と言います。
曰く、
01. 自分が特別だと思い上がってはいけない。
02. 自分が人より善良だと思ってはいけない。
03. 自分が人より賢いと思ってはいけない。
04. 自分が優れているとうぬぼれてはいけない。
05. 自分が人より知識があると思ってはいけない。
06. 自分以上の人間はいないと思ってはいけない。
07. 自分が何でもできると思ってはいけない。
08. 他人を笑ってはいけない。
09. 他人のやさしさを期待してはいけない。
10. 他人に何かを教えられると過信してはいけない。

見ての通り、見事なまでのないないづくし・・・。
デンマーク人なら誰でも知っていると聞きますが、現代では古い価値観に映り、問いかけると微妙な苦笑いを浮かべるそうです。
ただ、この「ヤンテの掟」は、協調性を重視し、謙遜を美徳とするデンマークのお国柄をよく表しているように思えてなりません。
「能ある鷹は爪を隠す」と「出る杭は打たれる」を足して2で割った感じでしょうか。

何となく一言で例えるなら、「水平線。」

デンマークでは、一番高い山でも標高173メートルしかありません。
氷河期に一面を覆いつくしていた分厚い氷が溶けた後には、平坦な土地が表れました。
デンマークが見渡す限りの平らな地平線だとしたら、四方を海に囲まれた日本では、水平線。
日本の平坦な土地には、余すことなく高層ビルが競い合い、協調性や謙遜の端くれもなくなってしまった。

この「ヤンテの掟」。なんとなく日本人にも馴染みやすい気がしませんか?
消極的過ぎると思われるでしょうが、日本において、デンマークのデザインが受け入れられ定着するまでに至ったのは、こんな気質にシンパシーを感じるからからなのかもしれません。

ただ、デンマークが持つ充実した福祉や馴染み深いデザインの裏側には、気候風土はもとより、消費税25%、所得税50%、投票率80%、穀物自給率100%越、風力発電20%、原発なし、そして、徴兵制あり・・・。
あまりにも日本と違う基盤を基にして、生み出されているということも認識しておかなければいけません。

『因果の花を知ること、窮(きわ)めなるべし。一切みな因果なり。
初心よりの芸能の数々は因なり。能を窮め、名を得ることは果なり。』  世阿弥「風姿花伝」

全ては因果応報なり。
表面的な美しさにばかり目を向けず、その根底に流れる歴史や文化を共に考えてこそ、その良さの本質に近づくことが出来るはずです。

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